『いつか』を呼ぶハーブティー

「……それでね、その男ったら謝りもしないでもう一杯よこせ、って言うのよ。ひどいでしょう?」
「そ、そりゃあ……ひでえな。男の風上にも置けねえやつだ」
「アーフェンならそう言ってくれると思ったわ。もう一杯お酌してあげちゃう」
「お、おう、ありがとな……っておい、プリムロゼ、注ぎすぎだ……ッ」


 ここはとある街の、とある酒場。
 ノーブルコートでひどい怪我を負った踊子プリムロゼの回復を待ってから、八人の旅人たちは次の目的地へ向けて再び出発していた。
 そして今夜は、一日歩いた旅の疲れを癒すべく、久しぶりに八人全員が酒場に集まったのだが──。



「……珍しいわね。プリムロゼさん、酔ってる?」
 オレンジジュースを片手に観察しながら、トレサ。
「……。まあ、無理もあるまい」
 一方、ウイスキーのグラスを手に難しい顔をする、オルベリク。
 彼らの視線の先には、酔って絡むプリムロゼに、隣で彼女の話を聞いているアーフェンがいた。
「よほど、今回の件が堪えているのだろうね。今日も気丈に振る舞ってはいたが、……心配だ」
 薄い色のカクテルを嗜むサイラスも、気遣わしげに二人の様子を見守っている。


 今夜のプリムロゼは、やはりいつもと違っていた。いつもなら可憐な笑顔とともに旅人たちにお酌をして回り、飲んで機嫌がよくなることはあれど、こんな風に酔って人に絡むことはない。
 けれど、今夜は最初から飲むペースが速かった。そして喋るペースも速かった。普段の倍くらいの回転で飲みながら取り留めもなくずっと喋り続け、隣に座ったアーフェンがそれに付き合っている、という形だった。


「プリムロゼがああいう風になるのは、意外だったな……」
 腕を組みながらハンイットが言う。傍らには炭酸水で割ったカクテルを置いていた。彼女がアルコールを入れるのは、珍しい。
「そうですね……プリムロゼさん、いつも飲まれてもしっかりされていますから」
 頷いたのは、両手でラテのカップを行儀よく支えているオフィーリア。
「それにしてもアーフェンさん、優しいですよね。全部ちゃんと聞いてあげてますから……」
「アーフェンが付き合ってるのは、プリムロゼが心配だからだろうな」
「……そう、ですね。わたしも心配です。……あんなことが、あったあとですから」
 オフィーリアが目を伏せ、ハンイットが軽くため息をつく。こうして、もう何時間も旅人たちはプリムロゼを見守っているのだった。


 ノーブルコート──プリムロゼの故郷で起こった出来事は、あまりにも過酷だった。運命はかくも人に対して残酷になれるのかと思うほどに。
 大怪我を負い、その後三日間の昏睡状態から覚めた彼女は、一切その時のことを語ろうとしなかった。そして今日もいつもと同じように淡々と歩みを続け、短剣を振るい、皆を鼓舞するようにステップを踏み続けた。
 誰もが、彼女が平気でそうしているのではないと承知していた。だから、こうして酒場に集まっているのだ。普段群れることを厭うテリオンですら、今夜はずっと旅人の輪から離れずに座っている。


「……だが、あいつが聞きたいのは、今踊子が喋ってるのとは違うことだろうがな」
 林檎酒のグラスを置いて、そのテリオンが首を振った。それには、オフィーリアもハンイットも言葉を返せない。
「さっきから、どうでも良いことばかりだ。いくら酒が人の口を軽くすると言っても、そろそろ限界だな」
「酒の力でも、無理、か……酔った勢いでも吐き出せるなら良かったんだが」
「さっきから、全部サンシェイドの酒場のお話、ですよね……。あれだけ出てくるのもすごいですけど……やはり、話したくないのでしょうか」
 見守る三人の前で、またプリムロゼが目の前のグラスにエールを注ぐ。



「なによ、これぐらい飲めるでしょ?」
「……いや、そうだけどよお」
 アーフェンは、とめどなく続くお喋りとお酌を受け止めながらも、ずっと待っていた。平静を装おうとして、けれどいつにない態度のプリムロゼが「何か」を話し始めるのを。
 しかし。
「あんたの方が、あんま飲むと体に触るぜ?」
「あら、お気遣いありがと。でも心配には及ばないわよ? この通り、元気だもの」
 ね、と笑う笑顔の艶やかさに、アーフェンはそれ以上言葉を継げなくなる。こんな状態でも、彼女は明らかに一線を引いていた。そしてまた、グラスに酒が満ちる。


「まずいわよ、これじゃプリムロゼさんが死んじゃうわ」
 衰えないお酌のペースに目を見張ったトレサが、焦ってオルベリクの袖を引っ張った。
「む……」
「確かに。目は潤んでいるし、顔が赤い……少し呂律も怪しいようだ。そろそろ止めた方が、彼女のためかもしれないね」
 サイラスがふむ、と頷いた。それを聞いたトレサは我が意を得たりと、さっそく水のグラスを手に立ち上がった。
「ねえプリムロゼさん、そろそろ止めようよ〜」
「ん? ……なによ、トレサ」
 振り向いたプリムロゼを見て、一瞬トレサはひるんだ。──明らかに、目が据わっていた。
(絶対もうダメなやつじゃない!)
「ちょっと飲み過ぎじゃない? いったい何杯目なの?」
「数えてないわよ、そんなもの。いいじゃない、たまには私だって飲みたい気分にもなるわ」
「それは、そうかもだけど……ほ、ほら、アーフェンもそろそろ酔っ払ってきてるし」
「アーフェンはまだまだ大丈夫よ、ねえ?」
「!?」


 話を振られたアーフェンは、しかし言葉に詰まった。
 ──というのも、いきなりプリムロゼが腕を絡めてきたからで。おまけに、潤んだ目で見上げられてはたまったものではない。


「……い、いや、まだいけっけどよ……」
「ほーら、ご覧なさい」
「……!! ちょっとアーフェン、せっかく人が助け舟出してあげてるのに!」
 詰め寄ったトレサに、アーフェンは慌ててわりい、と仕草で謝る。
 と、別の方向からも助け舟がやってきた。
「……プリムロゼ、これを飲め」
 かたん、と注意を促すように音を立てて、オルベリクがプリムロゼの目の前にグラスを置いた。中には濃い茶色の液体がなみなみと入っている。アーフェンの腕から手を離して、プリムロゼは嬉しそうに笑った。
「あら、……気が利くわ。ありがと、オルベリク」
「礼には及ばん」
 至って真面目に答えるオルベリクの袖を、トレサがまた引っ張った。
「ね、ねえオルベリクさん……」
「安心しろ、あれは麦を潰して作った茶だ」
「え?」
 オルベリクが声を潜めて告げた答えに、トレサとアーフェンが揃って目を丸くした。
「……見た目がウイスキーに似ているから、あれで誤魔化すのは使える手だ」
「な、なるほど……」
「さすがだぜ、旦那。ありがとな」
 アーフェンもいい加減プリムロゼの酒量が心配になってきたところだった。なんといっても、彼女は病み上がりなのだ。酒の入らない飲み物で少し落ち着けばいいが、と思ったところで。


「ちょっと、オルベリク? これ、お酒じゃないわよね?」


 プリムロゼが不満げに口を尖らせた。それを見て、オルベリクが渋面を浮かべる。
「……たまに、通じない奴もいるな」
「そ、そか……」
「まだそれが分かるくらい、頭は大丈夫ってことなのね……」
 トレサが妙な感心をしたところで、業を煮やしたプリムロゼが席を立った。
「もう、仕方ないから自分でボトル貰ってくるわよ」
「あ、おいっ、プリムロゼ……!?」
 普段の軽やかな足取りはどこへやら、明らかに危ないバランスで歩き出すプリムロゼ。それも二歩、三歩と行かないうちに、


「……!!」


「きゃっ、プリムロゼさん!」
 ちょうどオフィーリアの座っていた目の前で、プリムロゼがかくりとくず折れた。
「大丈夫ですか!?」
「プリムロゼ!」
 座り込んでしまったプリムロゼを支えようと、オフィーリアが床に膝をつく。すぐにアーフェンもそこへ駆け寄った。
「っあ〜、しょうがねえな……トレサ、水持ってきてくれ!」
「あ、うん!」
 にわかに酒場の中がざわめいた。その中でも、プリムロゼは糸が切れた人形のようにぼんやりと、集まってくる仲間を見るともなしに眺めている。テリオンがやれやれ、と首を振った。
「潮時だな。引き上げるしかないだろう」
「で、でも……この状態でプリムロゼさん、宿まで帰れるでしょうか」
「わたしがマスターに聞いてこよう。確か二階が宿屋だったはずだから、部屋が空いてないか掛け合ってみる」
 オフィーリアの心配にハンイットが請け合い、急ぎ足でカウンターに向かう。
 一方、プリムロゼはオルベリクに助けられながら椅子に座ったところだった。まだぼうっとしたままの彼女は、おとなしくトレサから渡された水を口に入れている。


 そんなプリムロゼの顔を窺って、アーフェンは密かにため息をついた。
 と、不意にぽんと肩を叩かれる。
「アーフェン君」
「……先生」
 振り向けば、気遣わしげな苦笑いを浮かべたサイラスが立っていた。
「随分頑張ってくれていたけれど……こうなっては仕方ないね」
「……おう」
 人の機微には聡明な学者の言葉に、アーフェンは肩を落とす。
 結末は呆気なく訪れてしまったが、今夜のことが少しでも彼女の気晴らしになればいい──せめてそう思わずにはいられない。
 けれど、彼にとっての夜はまだ終わっていなかった。



「大丈夫だ。二階の部屋が使える」
 急ぎ足で戻ってきたハンイットが旅人たちに知らせる。
「空いている部屋があるそうだ。プリムロゼをそこに寝かせていいとマスターに言って貰えた」
「本当ですか!? 良かった……」
「そか、そいつはいいな……ありがとな、ハンイット」
 アーフェンもほっと息をついた。宿まで連れ帰らなくてもいいのなら、プリムロゼにとっても、みんなにとっても負担が少なくて済む。
「礼はいらない。さっそく、プリムロゼを上まで連れて行かなくては」
「よし、そんじゃ女性陣!」
 頼んだ、とアーフェンが言いかけたところで、オルベリクが重々しくこう言った。


「アーフェン、お前が連れて行ってやれ」


「へ……俺え?」
 当惑してアーフェンが自分を指させば、オルベリクは無言で頷いた。
「だ、だって……倒れたのプリムロゼだしよ……ハンイットとか、オフィーリアのが適任じゃ」
「プリムロゼさんだから、でしょ」
 もう、とどこかもどかしそうなトレサが頬を膨らませる。
「へっ?」
「だからさむぐっ!」
 言葉を続けようとしたトレサの口に、テリオンが切り分けたリンゴを突っ込んだ。
「ひょっと!」
「──何を今更躊躇ってる」
 低い声と睨む青い目に、アーフェンは息を飲んだ。文句を言いかけたトレサも言葉を飲み込む。


「踊子の怪我の面倒を見ていたのはお前だろう。だったら、最後まで責任を持て」
「……!」


 アーフェンがはっと目を開いた。テリオンの後ろで、旅人たちが頷いてみせる。
「わたしも心配なのはやまやまだが……こういうのはあなた向きだ、アーフェン」
「プリムロゼさんのこと、よろしくお願いします」
 ハンイットとオフィーリアにも促されては、拒否などしようがなかった。


「わかった……わりい、ありがとな」


 任しとけと胸を叩いて、アーフェンはオルベリクに助けられながらプリムロゼを背負う。
「ハンイット、部屋の場所教えてくれるか?」
「わかった。こっちだ」
 ハンイットの案内でアーフェンとプリムロゼが酒場を出ていくのを、残った五人が見届ける。すると、サイラスがくくっ、と笑いを漏らした。
「……どうした、サイラス?」
「いや……『ありがとう』と言うものだからね」
 人の機微には聡明なこの学者は、とても愉快そうであった。
「分別をつけようとしていたが、本心は構いたくて仕方がないのを隠しきれていないね。……本当に、彼は真っ直ぐな子だよ」
 サイラスの言葉に、旅人たちはああ、と苦笑混じりに同意する。


 どうして、アーフェンがいつまでもプリムロゼの話を聞き続けていたのか。
 そして、なぜプリムロゼが愚痴を言う相手にアーフェンを選んでいたのか──
 はっきり口にはせずとも、彼らはみんな分かっていたのだった。


「……全く、本当に手のかかる奴らだ」
 テリオンのため息が、未だざわめく酒場にぽつりと木霊する。否定する者は誰もいなかった。


   ◆


 ハンイットに案内されて辿り着いた部屋は、幸いなことにベッドがきちんと二人分あった。大いに安堵したアーフェンは、背負っていたプリムロゼを片方のベッドに下ろす。
「それじゃプリムロゼ、わたしは先に失礼させてもらう。アーフェンに面倒見てもらって、ゆっくり休め」
 アーフェンが部屋のランプに明かりを灯している間、ハンイットがそんな言葉をかけていた。それに、プリムロゼは掠れた声でええ、と返している。かなり酒が回っているはずだが、受け答えができる程度には意識を保っているらしい。
「頼んだぞ」
「おう、任しとけ。おやすみ」
 簡単に挨拶を交わすと、ハンイットは部屋を出ていった。足音はすぐに遠ざかり、ランプでほの赤く照らされた部屋は、階下の喧騒から切り離されて静まり返る。
 ──これで、二人きりになってしまった。


「はぁ……」
 扉を閉めて、アーフェンはどうしたもんかとため息をついた。プリムロゼは眠るでもなく、ベッドに腰掛けたままぼうっと虚空を見つめている。
 ──今、彼女の胸の中にはどのような想いが去来しているのだろうか?
 あれだけ喋りに喋っていたからには、きっと何か言いたいことがあったはずなのだ。しかし──


(改めて、なんて、聞けねえよな)


 そう遠くない前のこと。想いを寄せるサイラスを守るため遠い街まで追いかけてきた女性を見て、プリムロゼは「自分にもあんな時があった」と零していた。
 それがつまり、ついこの間彼女の前に現れた『奴』に関わった時であったことは、アーフェンにも容易に想像がつく。
 けれど、そのことを聞き出そうとするならば──思い出させてしまうならば、再び彼女を深く傷つけてしまうだろう。あの日プリムロゼに押し寄せた運命は、そういう類のものだ。
 加えて、その領域に自分が踏み込むことはおそらく許されていないことも、アーフェンは弁えていた。


(とりあえず、酔い覚ましに何か作るか)
 自らも酒に半分やられた頭で、ぼんやりとアーフェンは考えた。手持ちの薬草の在庫と、酔い覚まし用の薬のレシピを霞んだ記憶の中から辛うじて掬い出す。
(……まずは、水貰ってこねえと)
 薬を調合するにも、プリムロゼに飲ませる時にも水は必要だ。急な宿泊のせいか、備え付けの水差しの中身は空っぽだった。
 ならば酒場から貰うしかない、と、プリムロゼに一言断るべくアーフェンが振り向いた瞬間だった。


「……アーフェン」


 か細い声が名前を呼んだ。
「プリムロゼっ!?」
 慌てて、アーフェンはベッドに座るプリムロゼの前まで駆け寄り膝を曲げた。
「どした? どっか具合わりいのか?」
 しかし、プリムロゼは俯いたまま微かに首を振る──と、不意にアーフェンの手首をぎゅっと掴んできた。
「ッ!?」
「……お願いが、あるの」
「な、なんだ?」
 盛大に動揺しながらも、アーフェンはプリムロゼの様子を窺おうと顔を寄せた。傷ついて憔悴した彼女の為に出来ることはなんだってやってやる、そんな気持ちだった。
 だが、彼女の告げた願いはアーフェンの想定の、遥か上を行っていた。


「……私の事、抱いて欲しいの」


 瞬間、アーフェンの脳から酒酔いなどまったく吹っ飛んでしまった。
「だっ……!?」
 大声を出しかけたところをすんでのところで飲み込めたのは、はっきり言って奇跡だった。
(いいい今、なんつった!? 抱いてって、どういうこと!? そういうことっ!?)
「なっ、なな何言って……だけ、って、その……つまり」
 しどろもどろになりながらも、アーフェンは気づいた。
 艶やかな鳶色の前髪から覗くエメラルドグリーンが、いつの間にかアーフェンを見上げている。


「……そうよ。あなたなら、意味、分かるでしょ……?」
 潤んだ瞳。掠れた甘い声。そしてこの言い草。
 間違いない、彼女は本気で落としにかかってきている。


「……!!」
 “誘惑”を正面から受け取ってしまったアーフェンは真っ赤になって絶句した。いま見ているものは果たして夢なのか、幻なのか?
 目の前に座って自分を見上げるプリムロゼは、まるで悪魔のように美しく、吸い込まれそうに魅力的だ。
「な、なんで……んなこと」
「……だって」
 再びプリムロゼは俯いた。途端、このまま抱きしめたくなるような愛らしさを醸し出す。
 本当に悪魔がいるのならば、きっとこんな存在に違いない──と、アーフェンは逃避的にそんなことを考えてしまう。
 けれど、彼女の願いは今見せているような可憐さとは反対の、とても痛々しいものだった。
「もう、何も考えたくないのよ……今も、黙っていると溢れそうなの。……だから、お願い、アーフェン」
 忘れさせて欲しいの、と、彼女は消えそうな声でぽつりと言った。
 思わずアーフェンは奥歯をぎり、と噛み締める。──どれだけ、どれだけプリムロゼは傷つけられたか、その傷の深さを改めて思い知らされる。もし、自分がこの腕で、その傷を忘れさせることができるのだとしたら?
「ッ……」
 そうしたいと願う理由が決して善意だけでないことを、アーフェンは自分でよく分かっていた。


(……どうする、アーフェン・グリーングラス)
 手首から伝わる熱に震えながら彼は自問する。
 シチュエーションは完璧だ。ここは二人きりの部屋で、いつもなら連れ立って同じ宿を取る旅人たちは、今頃別の宿にいる。
「……ほんとに、俺でいいのか」
 最後の抵抗のつもりで投げかけた問いにも、プリムロゼは小さく頷いた。手首を掴む手の力が、ますます強くなる。それは今の彼にとって、あまりにも甘やかな刺激だった。
(本気って、ことかよ)
 アーフェンは生唾を飲み込んだ。男である限り思い描かないわけもない光景が、今まさに実現しようとしている。
 据え膳食わぬは男の恥、ということわざが異国にはあるらしい。そして何より当のプリムロゼが望んでいる。ならばその期待と信頼に応えるのが、この場に立たされた男として果たすべきことではないのか──?


「……っ」


 その時、だった。
 不意にランプの火が揺らめき、あるものを照らす。
 ──それは、プリムロゼが腰に帯びている短剣。


(……!)
 彼女が片時も離さない、エゼルアート家に伝わる業物にして、あらゆる苦難に立ち向かう彼女の、生きる『覚悟』の証。
 それを見た瞬間、アーフェンは目が覚めたような気がした。
(違う……そうじゃない。そうじゃねえだろ)
 ──これでは『奴』と同じだ。この短剣に込められた覚悟も知らず、彼女を踏みにじった者共と変わらない。
(しっかりしろ、アーフェン・グリーングラス)
 大きく息を吸って、吐く。すると、酔いと不測の事態で逆上せていた頭がすっと冷めていった。いつもの自分が戻ってきて、今の自分が果たすべきことがはっきりと浮かび上がる。


 俺は、連れの薬師だ。
 薬師のやるべきことは、患者の痛みを『忘れさせる』ことなんかじゃねえ。


「……なあ、プリムロゼ」
 彼女を落ち着かせるように、アーフェンは精一杯の優しい声でプリムロゼを呼んだ。
「俺の知ってるあんたはさ……そんな風に、自分のことを蔑ろにしたりしねえんだ」
「──」
 微かに息を飲む音が聞こえた。それを声が届いた証と受け取って、アーフェンは言葉を続ける。
「いつだって、誇り高くて、……背筋しゃんと伸ばしてよ。どんなに苦しいことがあっても、絶対自分を曲げたりしねえんだよな」


(そういうあんたが、俺は好きなんだけどよ)
 ──なんてことは、もちろん言わないけれど。


「……でも」
 小さな、小さな声が、垂れた前髪の間から漏れた。
「ん?」
「だって、……でも、私は、」
 ほとんど息だけの声でプリムロゼが訴える。それを受け止めて、アーフェンは大きく頷いた。
「……ああ分かってる、あんたは疲れてんだ。……今のあんたに必要なのはあったかい飲みもんと、それからちゃんとした睡眠だ。そしたら、明日からまた踊れるようになるさ」
 それを聞いてプリムロゼが顔を上げる。どこか心細げな表情が捨てられた猫にも似ていて、アーフェンは胸に軋むような痛みを覚えた。
 鼻の奥がつんと熱くなるのを抑えながら、アーフェンは彼女の髪をぽん、と撫でる。そしてわざと明るくこう言った。
「任しとけ! 今からとっておきのもん作ってやるからよ、いい子にして待ってな?」
 ほんの少し瞬きをしたプリムロゼはやがて、本当に小さな子どものようにこくりと頷いた。



 しばらくして、アーフェンは二つカップを持って部屋に戻ってきた。酒場の厨房を借りて、飲み物を作っていたのだ。
 扉を開けた瞬間、まだベッドに座っていたプリムロゼはじっとこちらを見ていたが、すぐに目を逸らしてしまう。どことなく気まずそうな彼女に構わず、アーフェンは隣にどさりと腰掛けた。
 すると、薬草の香りをまとった湯気が、ふわりと二人の鼻先を掠める。
「こいつを飲むと、緊張してた神経が落ち着いてよく眠れんだ。騙されたと思って飲んでみな」
「……」


 プリムロゼは無言でカップを受け取り、じっと中身を見つめた。薄い褐色の飲み物が、彼女の手の中で静かに揺れる。
 緊張すんな、と胸の中で呟きながらアーフェンは自分のカップに口をつけた。
 この薬草茶は昔から知っているレシピだが、淹れるのは久しぶりだった。味見はもちろんしているが、緊張とまだ残っている酒のせいで、正直あまり味がわかっていない。それでもとりあえず失敗はしていないはずだ──多分。
 やきもきしつつ横目で様子を伺っていると、プリムロゼがやっとカップに口をつけた。
 と、彼女の瞳がにわかに大きくなる。
(ん……?)
 不味かったのだろうか、と早合点しかけたアーフェンだったが、すぐに違うと気づく。
 再びプリムロゼが薬草茶を口に含んだ。すると、彼女の表情が疑惑から驚愕へと移っていく。
 そして──
「……どうして」
 微かな声、それから雫がぽたり、と落ちる。
「プリムロゼ……?」
 次の瞬間、アーフェンは目を見張った。
 プリムロゼの、大きく開いたエメラルドグリーンの瞳から、涙が次々と溢れ出していた。


「……どうして、知ってるの……ひどいわよ、アーフェン……っ」


「ちょっ、俺!?」
 思いがけず向いた矛先にアーフェンが声をひっくり返すと、プリムロゼは俯いて首を振った。涙がまたひとつ、ランプの光に当たって煌めく。
「だって……これ、お父様の……っ」
 その後はもう言葉にならなかった。俯いたまま、カップを握り締めて、プリムロゼは肩を震わせる。
 ──泣いていた。
 これまでの旅路、その中で自分の境遇を嘆きすらしなかった彼女が、いま、初めて感情を顕に涙している。


 そう思ったら、もうアーフェンは堪えられなかった。
「プリムロゼ……!」
 掠れた声で名前を呼んで、白い肩を掴む。濡れた瞳がはたとこちらを見上げたがそれに構わず、彼女が抱えるカップにも無頓着に、ほとんど強引に身体を引き寄せた。
「……!」
 腕の中で彼女が少し震えた。けれど止められない衝動のまま、彼女の頭を抱え込むように自分の胸に押し当てる。
 抱きしめたプリムロゼの身体は、アーフェンが思っていたよりずっと細く、華奢だった。折れてしまいそうというのはこういうことかと、まざまざと実感する。


(こんな……こんな細え身体で堪えてたのかよ、あんたは……!)


 己を信じ、貫くこと。自分の脚で、踊り続けること。
 欲望だけが満ちた砂漠の街で、理不尽な仕打ちの中で、旅立って尚荒れ狂う運命の中で。
 プリムロゼがその華奢な肢体で、たったひとりで越えてきたさまざまを改めて想い、アーフェンは自分も目頭を熱くする。


 ──ほんの少しでいい、自分が彼女の力になれたなら。
 たとえ踏み込むことを許されなくても、過酷な道を進んで歩む彼女を支える力であれたならと、これほど強く願ったことはなかった。


「……っ」
 不意にアーフェンは息を飲む。背中にわずかな感触を覚えたからだった。──プリムロゼが、細い腕でアーフェンの背中にしがみついていた。
 それに応えるように、アーフェンは深く彼女の背中に腕を回して、ほんの少しだけ力を込めた。決して苦しくないように。けれど、伝えたい想いを込めるように。
 すると、鼻先に髪の甘い香りが触れた。プリムロゼが踊子の嗜みとして香水をつけているのは知っていたが、それともまた違う香りだった。
 こんな近くにいんだな、と、今更のようにアーフェンは思い知る。実はすごいことをしでかしているのかもしれない、とも思ったが、今のところプリムロゼが嫌ではなさそうなので、よしとしよう。
 ──もう、アーフェンの中から激情は通り過ぎていた。手のひらでそっとプリムロゼの髪を撫でながら、今も静かに泣いている彼女を受け止める。


(……なんか、こんな時でも声出さねえんだな、あんたって)


 こんなにも感情を溢れさせているのに、プリムロゼは一言も嘆かず、嗚咽を漏らすことすらしないのだった。
 それが、どんな時でも強くあろうとした彼女の最後の意地にも思えて、不覚にもアーフェンは笑いそうになってしまう。


(……いいぜ。たくさん泣いとけよ、プリムロゼ)
 涙だって時に人を癒す薬になる。アーフェンはそのことを経験でよく知っていた。
 たとえ何も語れずとも、この涙はきっとプリムロゼを大いに慰めてくれることだろう。だからこそアーフェンも何も言わず、泣き続けるプリムロゼを見守るのだった。


    ◆


「……ごめんなさい、迷惑かけたわ」
「ん、いいってことよ」


 ようやくプリムロゼが顔を上げた頃、時刻はとっくに深夜を回っていた。
 今はベッドに並んで腰掛けた二人の間で、淹れ直した薬草茶の湯気がランプの明かりに照らされている。
「あなたのこと、困らせて……子どもみたいなこと、したわ……恥ずかしい」
「たまにゃいいんじゃねえの? あんた、いつもはしっかりしてんだからよ。……つうか、泣くのは恥ずかしくねえって前に言ったのはあんただろ?」
「……自分のことは違うのよ」
 そう言ってプリムロゼがそっぽを向く。
 ──そんなところはかわいいのな、なんてアーフェンは思った。だが口に出せば薮蛇になることが分かっていたので、敢えて違う話題を持ち出した。ずっと気になっていたことだ。


「……なあ、聞いてもいいか? その……今飲んでる薬草茶のこと……飲んだこと、あんのか?」
 お父様の、とプリムロゼは漏らしていた。その言葉に、いったいどんな意味があるのだろうか。
 プリムロゼはふっと遠くを見るように目を細めて、それから「いいわ」と頷いた。
「これは、生前の父が、眠る前に飲んでいたものと同じ味だったのよ」
「……!」
 告げられた言葉に、アーフェンは驚いてプリムロゼの方を向く。
「父はとても厳しい人で、私はよく泣いていたけれど……このお茶を飲む時は、いつも……優しい父の顔をしていたわ。
 週に一度、私が父の書斎まで淹れたてのお茶を持って行って、一緒に飲んでいたのよ。……まさか、こんなところでこの香りにまた会えるなんて思わなかったけれど」
 そう言って、プリムロゼはかつての光景を懐かしむように微笑んだ。
「それに、今思い出したわ。……アリアナがこのお茶を淹れていたのを見てた時のこと……確か、ラベルに『クリアブルック』と書いてあった」
「! ……そうだったのか」


 アーフェンの生まれ育った村で作られた茶葉が、エゼルアート家で飲まれていた。
 ということは、今アーフェンが淹れた薬草茶は紛れもなく、彼女が昔父親と飲んでいたものと同じ、ということだ。なぜなら──


「この薬草茶はさ、母ちゃんから教わったレシピなんだ」
 それを聞いて、プリムロゼが目を見張る。
「あなたの母親……って言ったら」
「そ。一、二年前に死んじまった……な。母ちゃんは薬師じゃなかったけど、経験で薬草の効果が分かってたんだな。
 ゼフの……ダチの薬師の父ちゃんとか母ちゃんと一緒に、仕事の片手間に茶葉作って行商人に売ってたって話は知ってたけど……まさか、フラットランドでも売れてたなんてなあ」
「そう。……不思議なものね」


 なんと不可思議な巡り合わせだろうと、アーフェンも思った。遠い昔、それぞれがお互いの存在を知りもしなかった頃に親しんでいたものを、今こうして二人で再び味わっているなんて。
 それに、遠い昔にそれぞれが同じ味を親しんでいた相手は、二人とももうこの世にはいないのだ。
 これも何かの──聖火のお導きというものなのだろうか。


 そんな風にアーフェンが考えていると、不意にプリムロゼが言った。
「……でも、ありがとう。アーフェン……おかげで、忘れていた大切なものを思い出せたわ」
「そか、……そいつはよかった。ひでえって言われた時は焦ったけどよ」
 わざとアーフェンがおどければ、プリムロゼも小さく笑った。そして。


「それにね」
 アーフェンの肩に、ぽすりと柔らかいものが当たった。
 同時に、甘い髪の香りがアーフェンに届く。


「……!?」
 プリムロゼが、アーフェンの肩に甘えるように頭を寄せていた。思いがけず触れたぬくもりに、アーフェンの心臓が一気に鼓動を上げる。
 それを知らずか、それとも知ってか。プリムロゼは静かに言った。
「ありがとう。私が眠っていた時も、ノーブルコートを出た後も、それに、今も……何も言わずに、私の傍にいてくれて」
「……」
「おかげで、どんなに勇気づけられたかわからない。……とても、心強かったわ」
「……そ、か」
 アーフェンは目を伏せて大きく息をついた。それなら、自分が彼女に構い続けた甲斐もあったというものだ。
 プリムロゼが明日からまた元気な姿を見せてくれるなら、自分の役目は十分果たせたと言えるだろう。やっぱり俺は、選択を間違っていなかった。しかし──
「本当は……きっと、言いたいこともたくさんあったでしょ……?」
 プリムロゼが続けた言葉に、アーフェンはぐっと胸を詰まらせる。それも、紛れもない事実だったから。
「……ああ、そうだな。……本当は、いっぱいあったさ」


 仇討ちなんかやめてくれとか。
 もうこれ以上危険を押して飛び込むのはやめてくれとか。
 ノーブルコートで会ったあの男は結局何だったんだ、とか。
 言いたいこと、聞きたいことはごまんとある。けれど、それをすべきでないことをアーフェンはきちんと弁えている──つもりだ。


「でも、どうあってもお前は先に進むんだろ。……それなら、俺が何か言うべきじゃねえよ」
「……ええ、その通りよ」
 肯定した彼女の声は、もういつものような凛とした響きを帯びていた。
「私はエバーホルドへ行く。そして……」
 プリムロゼの言葉はそれきり途切れる。けれど、アーフェンはその後に続くものを知っていた。
 彼女はきっと最後まで、自身が身に帯びた業物に懸けて、己を信じ貫くだろう。
 それこそが、ノーブルコートに生まれ育った誇り高き女性、プリムロゼ・エゼルアートの原点だから。誰にも、止めることはできない。


 そこで、アーフェンははたと思った。
 彼女が旅路の果てまで辿り着いたなら。その後、彼女はどうするつもりなのだろう──?
 そう考えた時、アーフェンの中でひとつの願いが浮かび上がる。


「……なあ、プリムロゼ」
「なに?」
「お前の旅が落ち着いたら……いつかでいい、俺の村、来ねえか?」
「……?」
 プリムロゼが怪訝そうに眉をひそめたのを察して、アーフェンは慌てて言い訳がましく弁明した。
「いや、変な意味じゃなくてよ……村帰ったら、薬草は採れたてだしきっとここで飲むより美味いと思うんだよな。それに、母ちゃんが作ったレシピは他にもあるし……だから、茶でも飲みに来ねえかって」
 言いながら、なぜこんなに動揺する必要があるのかと冷静な自分が突っ込みを入れた。だが、答えは最初からはっきりしている──相手がプリムロゼだからだ。


 アーフェンが半分冷や汗をかきながら返事を待っていると、ややあってからプリムロゼがおかしそうに笑った。
「ふふ。……お酒じゃなくて?」
「……おう。茶だ」
「そう。ええ、いいわよ」
「え? ほんとか?」
 思いがけずあっさりと肯定を貰い、アーフェンは目を丸くしてプリムロゼの方を向いた。
「行ってみたいわ。……きっと、いいところだと思うもの」
「へ? なんで」
「だって、あなたが生まれ育ったところでしょう?」


 そう言ってこちらを見上げたプリムロゼの表情に、アーフェンは一瞬時が止まったかと思った。
「……っあー、くそっ……」
 じわじわと頬に血が上るのを自覚して、思い切り明後日の方を向く。それを見て、プリムロゼがくすくす笑った。
「なに照れてるのよ」
「……だ、だってよ……」


 ──んなこと言って、勘違いしても知らねえぞ。
 なんてことは、もちろん言えるわけがないけれど。


「あー、もう……ケツが痒くなんだろ……」
 捌け口に、そんなどうでもいいことをぼやく。
 実際擽ったくてしかたなかったけれど、同時に、こんなに幸せな気持ちになっちまっていいんだろうかとも思う。
 ともかく、『この先』の約束をひとつ取り付けた。それが、プリムロゼにとってまた歩みを進める力になったらいい。今の旅路だけでなく、その先まで──。
 いったん望んでしまったら、人はどこまでも欲深だ。つくづくアーフェンは実感した。


「……ねえ、アーフェン」
「んっ?」
「私ね、……薬、効いてきたみたい」


 暫しして耳に届いた、どこか舌足らずの言葉。なんのことかと思ったアーフェンだが、すぐに思い出す。薬草茶の効能は、神経を落ち着かせて穏やかな眠りをもたらすものだった。
「んじゃ、そろそろ寝るか?」
「ええ、……そうするわ」
 ふわりと眠そうに微笑んで、プリムロゼの体温が離れた。少しどころでなく名残惜しかったが、仕方がない。
 アーフェンはベッドを降りて、プリムロゼはそのまま座っていたベッドに横になる。上掛けで首まで隠れたところで、彼女がまた上目遣いでアーフェンを見つめた。
「ねえアーフェン……お願いが、あるの」
「ん? どした」
 なんだかちょっと前に聞いたフレーズだと、アーフェンは一瞬どきりとする。けれど、プリムロゼがほんの少し頬を染めながら、小さな声で言ったのはこんなことだった。


「私が眠るまで、……傍に、いてくれるかしら」


 それは、とても可愛らしい『お願い』だった。
 やはり今夜の彼女は、まだどこかいつもと違うようだ。けれど、今のは──悪くない。
「ああ、勿論いいぜ」
 アーフェンはプリムロゼに向かって安心させるように微笑みかけると、上掛けの裾から出てきた手を握る。彼女の細い手は、眠たい子供のように温かかった。
「ありがと……なんだか、ほっとするわ」
 指先が絡むと、プリムロゼはそれをしっかり感じ取るように大きく深呼吸した。
「おやすみなさい、アーフェン……」
「おう。ゆっくり寝ろよ」
「ん……」


 微かな声が答えたかと思うと、プリムロゼはすぐに寝息を立て始めた。ゆっくりと静かな呼吸音を聞き届けて、アーフェンもまた深くため息をつく。
 彼にとっての長い夜が、ようやく終わりを告げようとしていた。
「峠は越えた、ってとこかな……」
 眠る彼女の穏やかな顔を見つめて、そんな風に呟く。
 プリムロゼが眠ったのだから、もうアーフェン自身も床に就くべきだった。けれどまだ握ったこの手を離しがたいものがある。きっと、こんな優しい時間を過ごせるのは今だけだからだ。
 明日になれば、また八人揃って旅を続ける。そしていつかは必ず、プリムロゼの最後の目的地に辿り着くことだろう。
(……エバーホルド、っつってたな)
 ハイランド地方の峻厳な山々の間に築かれた都市の名前──という知識だけはあるが、アーフェンはまだその地を見たことはない。
 だが、荒涼とした山道にしゃんと背筋を伸ばして立つプリムロゼの姿は、容易く想像がついた。


 どうあっても先に進むと決めた彼女の為にできることは、これからも多くはないだろう。
 それでも──そんな彼女の凛とした背筋を折るような出来事が、どうかこれ以上起こらないように。
 今は安らかに眠るプリムロゼの顔を見ながら、アーフェンはそう願わずにはいられないのだった。


プリムロゼ3章クリアのパッションでぷらいべったーにぶん投げたのち、4章クリア後修正してpixivにアップしました。
ゲーム本編PTチャットでのアーフェンが、本当に余計なことを一切話さずプリムロゼに寄り添っていたところからすると、このお話のアーフェンはちょっと踏み込み過ぎかなとも思いましたが、アフェロゼ推しの見る夢ということでひとつご勘弁ください。
プリムロゼにはどこかで思い切り泣いて欲しいです。し、アーフェンにはそれをぎゅっと受け止めて欲しいなと思っています。

pixiv公開: 2018/8/27